ある異星人との約束【S.H.Figuarts ウルトラマンエースのお話】

優しさを失わないでくれ

弱いものをいたわり 互いに助けあい

どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ

たとえその気持ちが 何百回裏切られようと

それが私の最後の願い


ウルトラマンA最終話にて、エースが人々に向けて放った言葉です。本編は未視聴でも知っている、という方も多いのではないでしょうか。

この度発売した【S.H.Figuarts ウルトラマンエース】は、あの声が聞こえてくるような、素晴らしい商品でした。

本商品の評を一言で申しますと「時世の荒波を超えて、約束を守ってやってきた完璧な品」。造形も可動も何もかもが良い、小さな本物が手の中にいました。


ところで、パッケージから取り出した私の頭を真っ先によぎったのは「あれ、関節ゆるい?」という感想。初回生産時のS.H.Figuarts ウルトラマンに近いものを覚えました。

商品として問題というほどではないですが、「あれ?」とどこか引っ掛かる。ここ最近のクオリティが凄まじすぎて忘れていた感覚。BEST SELECTION版のウルトラマンの関節が劇的によくなっていたこともあって、余計そう感じたのかもしれません。


もちろん個体差である可能性も高いと思います。ただ、今回私が得た感動を届けるため、ここはあえて「緩いのは仕様」という前提で話を進めます。

要するに本記事はいつも通りの私の妄言です。




「以前の商品でできていたことが今回できていなかった」というのは、必ずしも手抜きとは限りません。裏を返せば「これまでと同じような時間や予算などがなかった」ということも往々にしてあるでしょう。

ここ最近のS.H.Figuartsに感じていた「遊びやすさ」。最近はどのおもちゃも高水準ですが、これはざっくりと言えばトライアンドエラーの賜物です。

おもちゃは、ユーザーの手元に届くまで、微調整を重ね、ノウハウを活かし、時には挑戦し、作っては直しを繰り返します。


遊ぶ側として見ても、おもちゃには実際に触れなければ分からないことがたくさんあります。作るとなると、その何倍も気を配り、確認をせねばならないのです。

にも関わらずこの世相。今まで通りが通用しない、確認に向かうことすら満足にできない。

そんなご時世に発売を延期しないためには、推し量れない誰かの努力があったことでしょう。もしかしたら、これまでの経験や先人の歩みを信じて、泣く泣く削られた工程もあるかもしれません。この原型の素晴らしさを、設計を、パッケージを、製品を、発売日という約束を守り、楽しみに待つ私たちへと届けるために。


この数ヶ月、たくさんのおもちゃの発売スケジュールが乱れました。それは言うまでもなく悪いことではありません。そこには、約束を反故にする悔しさに耐えて、私たちの笑顔を信じたかっこいい大人たちを見ることができます。


一方で、私たちの気持ちに応え、スケジュールを守るのもまた素晴らしいことです。

その結果、遊びやすさにほんの少しのしわ寄せがあったのかもしれません。

しかしその上で、2016年の精一杯だったであろう商品のクオリティに届いているという事実。造形面はさらに進化していますし、これは物凄いことです。

私がこの商品に見たものはそんな、諦めない大人たちの努力が生んだ感動の光でした。


そしてこれは、今回のエースや、昨今の情勢に限った話ではありません。

少しの塗装ミス、遊びにくさ、成形不良など、私はこれからもたくさんの『弱いもの』に出会うことでしょう。そんな時、負の感情よりも先に、制作者を信じ、その裏側を、優しさを持って感じてみたいと思うのです。

私は、今後の人生で何百回と裏切られ、もしかしたらこの『優しさ』を忘れてしまう瞬間が来るかもしれません。それでも、決して失うことはしないと誓います。

それが彼の、変わらぬ願いですから。

おもちゃ好きの話したがり

おもちゃへの興奮や感動、湧き上がる気持ちが溢れてしまいました。皆様も我慢なさいませんよう。

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