世界を見る【フィギュアの可動のお話】
残暑と申しますには肌寒い今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。おもちゃ好き屋さんです。
すっかり涼しくなった空気が体を冷やし、急な気温の変化に動き回ることが億劫になられた方もいらっしゃることでしょう。そしてそれは人間のみならず、おもちゃもまた同様です。本日は、関節が冷えて運動不足なフィギュア達を押入れから引っ張り出すべく、フィギュアの可動、ひいてはポージングの一助となるお話をさせていただきたく存じます。
さて、立ち姿の美しさは、それだけで魅力となって映るものです。
おや、折角かっこいい仮面ライダーゴーストですが、この立ち方ではアクティブすぎてゆっくりと眺めることができません。動きのあるポージングもいいですが、まずはすっくとそびえる、綺麗な素立ちに挑戦してみましょう。
少ない可動域のおかげで、美麗で力強いポージングが簡単にできました。
こちらのゴーストにも、美しい姿勢を教えて差し上げましょう。このままでは緊張と肌寒さで体が凍りついてしまいそうです。
たくさん可動域があると、容易に考えられることが増えて、そのぶんの苦労と、反面ここもかしこも動かせるという落ち着きが心に生まれます。
より造形の良いフィギュアになれば、更に理想の実現が身近になりますね。
ではお次は、下に示しましたポーズを、様々なフィギュアで再現してみます。
フィギュアーツの造形や可動域は、皆様も認めるところでしょう。少々お高いですが、値段相応の価値があることは疑いの余地がございません。
時のボーイズトイアクションフィギュア、GCシリーズも、子供向けとは思えない可動域を誇ります。しかし、フィギュアーツと同じポーズをするのには、首の可動、手の表情、閉じられない股関節など、欲しい要素が多々あることに気づけるでしょう。
更にそれがソフビとなると、求めることはより顕著に表出します。足を前後に動かせたら、肘が曲がれば……。素立ちの際にはあんなにも優秀だった少数精鋭な可動域が、ポーズによってはこのように欲をぽろぽろと生み出してしまうのです。
しかし裏を返せば、望む姿から逆算するだけでポージングは思いのまま、ということでもあります。
おもちゃで遊ぶときに、必要なのは想像力と観察力ではなかろうか、と思っております。とは言いましても、それがなければならない、というわけではなく、誰しも意識せず、自ずから発揮しているものです。
例えば上のふたつのフィギュアは、同じポーズをしています。
ソフビがこのポーズをとっている、と思えるのは、皆様の中で疼く想像力の賜物です。
フィギュアーツにこのポーズを取らせる、というのは、皆様がゴーストや実際の人々、筋肉、シルエットなど、各々が可能な範囲で、力むことなく世界を観察し、再現せんとする努力の結晶です。
このふたつがないまぜになり、夢中になっている間、そこには想像の世界が生まれます。その世界ではどのフィギュアも等しくゴーストで、どのおもちゃも本物になり得るのです。
すなわち、おもちゃやフィギュアを動かす、というのは、世界を創造するのに似ています。そのようなことを容易に体験させてくれるおもちゃの素晴らしさはもちろんのこと、それらに自然と順応する心の健やかさこそ人間の素敵な性質なのです。
おもちゃが素晴らしいのも、それを扱える幸せも、人間ゆえに享受できることではないでしょうか。可動域の多寡は気になる点かも知れませんが、多いものには多いなりの、少ないものにもそれなりの長所があるものです。そこに気づけるのもまた、人間の良き姿であります。数だけで見るのではなく、その数だからこその楽しみをを見つけてみるのもまた一興です。
このような幸福に感謝しつつ、更に素敵な人生のため、皆様が良いおもちゃに出会えますよう、心よりお祈りいたします。
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