蠱惑の猫箱【シークレットのお話】
紳士淑女の皆々様、ご機嫌麗しゅう。おもちゃ好き屋さんです。夜も更けてまいりました。世界が闇に溶け、月明かりに頼もしさを感じるお時間です。
私も皆様も、このページを通じて、あるいは多様なネット環境を介して繋がっております。画面の向こうにはきっとこんな御仁がいらっしゃるのだろう、彼は、彼女は、こんな人ではなかろうかと、姿の見えない相手をうすぼんやりと思い描いていることでしょう。
そういった秘匿性は時に神聖となり、更にはより良い魅力となって映るものです。
シークレット。言葉から甘美な香りが漂ってきます。その響きに魅了された方も多いのではないでしょうか。
その神秘を守るべく、シークレットを内包するものは概ねクローズドパッケージにて世に出ます。クローズドパッケージとはすなわちシュレディンガーの猫、すべてがそこにあり、けれどひとつしか入っていない、可能性の塊です。それは時に、我々を悦楽の園にいざないます。
例えば、くじ引きの下位賞がクローズドパッケージだったらどうでしょう。すでに「くじ引き」という遊戯に興じたというのに、また次の快楽がそこまで迫っているのです。心臓がざわめき立ちます。全身を興奮が揺らしますね。
この?の内には何があるのだろう。誰が待っているのだろう。想像するだけで、心は揺らぎます。そう。そこにおもちゃそのものが無いにもかかわらず、既に推測で楽しめているのです。
玩具とは、名の示す通り遊ぶものです。そしてシークレットは、それを何倍にも膨らます魔性の概念、詰まるところ、より遊べるようにしてくれる魔法なのです。
さて、我が家にあるシークレットで手近なものを並べてみました。改めて探すと非常に少ないですね。バラで売られているものをお迎えすることの良さも分かりますが、いつ出会えるのか分からないいじらしさには、やはり心をくすぐられます。
例えば、塗装に工夫がなされたもの。キャラクターの選択に粋が光るもの。華美な一手間を加えられたもの。シークレットとは、こうしてシークレットでなくなったあともシークレットたり得る存在なのです。
こちらも同じく、なかなか出会えないものたちですが、シークレットではなくレアと呼ばれる枠に属し、ラインナップに明示されている点で異なります。塗装や成型に凝るぶん、生産数を減らして採算をとっているのですね。カプセルトイやクローズドパッケージならでは、出会いの感動を更に演出してくれます。
おもちゃの遊戯にルールはありません。自由に楽しめるもの、それすなわちおもちゃなのです。時にそれは、物質の枠を飛び越えて概念にさえなり得ます。秘密は秘密だからこそ良いものですが、おもちゃの秘密はそんな感覚をも超越してしまう、甘い甘い蜜です。たまには、そんな誘惑に甘えても罰は当たらないのではないでしょうか。
その先で、皆様が素敵なおもちゃと出会えますことを、心よりお祈りいたします。
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